
スプリング・エフェメラルという言葉を聞いたことがありますか。
英語で Spring Ephemeral と書きます。
「春の儚いもの」「春の短い命」とでも訳せばいいのでしょうか。
春先に花を咲かせた後、夏の暑さに見舞われる前に、はやばやと葉を枯らせて地下でじっと翌年の春が訪れるのを待つ植物たちのことです。
山野草には、こんなスプリング・エフェメラルがたくさんいます。
カタクリやセツブンソウ、それにキクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、サンリンソウなどの仲間が代表的なところです。
わたしはイチリンソウの仲間たちが大好きで、鉢の数でも十数鉢もありますが、この仲間たちは、見かけによらず丈夫で毎年確実に殖えてくれます。
根茎が横に伸びていくので、植え替えをしないで放っておくと、鉢の隅のほう隅のほうへと伸びていくことになります。
つまり、花は鉢の端っこに集中することになります。
植え替えをするときに、長くなった根茎を数センチくらいにポキッと折ってやれば、どんどん殖えていきます。
植えるときには、その根茎が伸びることを考えて上手に植えないと、またすぐに端っこばかりに花が偏ってしまいます。
キクザキイチゲ(菊咲一華)はキクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)ともいいますが、結構殖えて、すぐ鉢がいっぱいになります。
早春に、柔らかな葉を開いて、直径3cmほどの白や薄紫の可憐な花を揺らめかせます。
ところが、このキクザキイチゲは、鉢植えにすると葉はたくさん出るものの、なかなか花がつきません。
山野草は、自然の山にあるときには、落葉樹林下で生育しています。
落ち葉が堆積した地面、すなわち腐葉土のなかで生活していると言っても過言ではありません。
一年中、じわじわと腐葉土の栄養の恩恵を受けているわけです。
腐葉土の栄養はたかがしれているでしょうが、何しろ一年中腐葉土からしみ出る栄養を享受しているということです。
初めのうちは、どうして花が咲かないのかわからずに、首をかしげてばかりいましたが、それに気づいてからは、とにかく肥料をたくさん与えてみようと考えました。
葉っぱがあるうちはとくに大事です。
薄目にした液肥を、水やり代わりといってもいいくらいに、毎日のように与えてみました。
さらに、ブドウ糖液です。
このブドウ糖液は、ユリ科の球根植物に大変効果的です。
ユリの仲間に与えるついでに、キクザキイチゲを初めとする仲間たちにも施してみました。
夏前には、葉は枯れて、地上部は跡形もなくなって、休眠状態に入ります。
植え替えるときは9月頃に植え替えて、そのころからまた肥料を与え始めます。
そろそろ根が活動し始めるからです。
こうして、一年を経たキクザキイチゲの根茎は、時には、1cm以上もある太さになって、鉢土の上まで盛り上がったりします。
こうなったら、もう花が咲くかどうかなんて心配はする必要はありません。
にぎやかに、鉢の上に百花繚乱と咲き誇るキクザキイチゲに、ただ見とれるだけです。